2014年12月16日火曜日

ルイス・ガレー振付《Mental Activity》―物体と関わる身振り。テクスト化する身体―

ルイス・ガレー:振付《Mental Activity》
京都国際舞台芸術祭2014
2014年10月11日(土)
京都芸術センター講堂



《Maneries》で洗練されたミニマムな身体表現を追求したルイス・ガレー。今回、《Mental Activity》では一転、粗暴なまでに生々しい舞台を提示した。
 暗い会場に入ると、ちょうど観客の目の高さからのライトに照らされて、舞台だけが浮かび上がっている。墨があちこち塗りたくられ、水もまき散らされており、それらが導線となって何かが起こりそうな不穏な予兆が漂う。
 すると突然、周囲の暗闇から舞台に投げ込まれる、ネックレスひとつ。それを合図に、ペットボトル、ボール、長靴、ハイヒール、自転車のサドル、土管、タイヤ、レンガ、岩、発泡スチロール、丸太等々、ありとあらゆる大量のガラクタが次々に投げ込まれる。たちまち舞台一面ガラクタで埋め尽くされ、足の踏み場もないゴミ捨て場と化す。こんな場所でダンサーは本当に踊れるのかと訝しく思えるほどだ。
 4人のダンサーが静かに登場する。一呼吸あって、ひとりのダンサーがガラクタの中を走り抜ける。次はふたりが肩を組んで、さらには3人が肩を組んで、その次は4人全員が肩を組んで倒れ込むように疾走する。怪我もせんばかりに、ガラクタの中を駆け抜ける。
 次に、女性ダンサーが手を使わず、頭を付けて丸太を押し動かす。そしてゆっくり丸太を立てる。そのあと、4人がそれぞれ、手当り次第にガラクタと戯れる。石を持ち上げ、レンガを投げ上げ、綱で縛ったコンクリートブロックを振り回し、土嚢を口でくわえ上げる。ブリキ缶をなめ、フェルトペンで腕に線を引く。綱を引き合う、長い木の枝の両端をふたりのダンサーが双方の頬だけで落ちないように支え合いながら静かに移動する等々、雑多でプリミティブな行為を繰り広げる。音楽は最初かすかな地響きのようなサウンドが徐々に大きくなるという単純なもの。そのことがかえって、観者をダンサーの動作だけに集中させている。

 素手のときのダンサーの身振りは言語以前のイメージにとどまる。それに対し、ピナ・バウシュのタンツテアターにしばしば見られるが、物体と関わって踊る身体はある種のテクスト性を帯びる。物質と身体が織りなす交点に意味が立ち上がる。ガレーは「精神の働きは極めて物質的」と語る。題名の《Mental Activity》を訳せば「精神活動」だ。ガラクタとダンサーがあたかも交信しているかのようにも、ガラクタを浄化する儀式とも解釈可能であり、肉体、精神、物質が三つ巴となって荒々しい相克の表情を見せる。それは取りも直さず人間の原初的な営みそのものであり、ガレーはその裸形を突き刺さんばかりに我々の眼前に投げ込んだのだ。

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