2014年11月25日火曜日

トヨタコレオグラフィーアワード2014~次代を担う振付家の発掘~

トヨタコレオグラフィーアワード2014~次代を担う振付家の発掘~
ネクステージ―最終審査―
2014年8月3日(日)15:00開演
@世田谷パブリックシアター


 トヨタコレオグラフィーアワードは、次代を担う振付家の発掘と育成を目的に2001年に設立され、本年で9回目を迎えた。8月3日に行われたネクステージでは、203組の応募の中から映像と書類選考で選ばれた6名のファイナリストの作品が上演された。同日に審査委員とゲスト審査委員の討議・投票により「次代を担う振付家賞」1名、観客の投票により「オーディエンス賞」1名が決定。今回のアワードでは、川村美紀子がともに受賞した。
 川村美紀子の作品は憎らしいくらい素晴らしかった。ダンサーの動きは洗練され、照明はストロボ等を使いカッコよく、音響はスタイリッシュ。その一方で、電車がホームに入って来る前に流れるメロディーや地震速報のアナウンスに振りをつけたり、舞台上にラジコンで動くキューピー人形が何体も登場したり、ユーモアも忘れていない。整然と構成された作品のように見せかけておいてハズすところはハズす。そのバランスの良さが観る者を飽きさせず、最後まで惹きつけた。
 ここで注目したいのが “振付”の定義である。審査委員の一人によれば、ダンサーに動きをつけることだけを振付というのではなく、作品全体の構成や演出、照明、音響、舞台美術を考えるのも振付家の仕事の一部と考えられるようになってきたというのである。だが、あくまでそれは個人の意見で、審査委員みながそう考えているわけではないらしく、たしかに審査も難航していた。他の5人の振付作品も、何かしらのポイントで良さがあったことは言うまでもないからだ。
 その一人、コンタクトゴンゾの塚原悠也は、「ダンスの教育や、ワークショップ等を一度もうけていなくても12時間程度の準備で誰でもが再演可能」で「テクニカルな予算もほぼかからないし、リハーサルも必要ない」作品を製作した。誰もができる、どこでもできる振付こそ優れているという視点を提示することにより、“振付とは何か”というアワードの目的自体に一石を投じるものであった。それを排除せずファイナルの場に残しているというのは、われわれ観客も“振付”について考えよ、と問われているようであった。
 どこまでが振付か、どんな振付が優れているのか、結局明確な答えはみつからなかったが、その時代その時代に考え続けることが有意義なことではないだろうか。そもそも芸術作品を競わせるのは難しい。スポーツのように点数を入れればよいという明確な基準がない。あったとしてもそれは個人の基準であり、観る者同士その基準の違いをお互いに探り合うこともまた数字では表せない世界の魅力の一つといえる。今回は、“振付”について考えるきっかけを得たのはもちろん、注目の振付家たちの作品を一堂に観ることができて、一観客としては大変満足であった。


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