2014年10月22日水曜日

プーシキン美術館展 フランス絵画300年

プーシキン美術館展 フランス絵画300年
2013年4月26日~6月23日
愛知県美術館


 愛知県美術館で開催された『フランス絵画300年 プーシキン美術館展』を観た。展示の構成は「17世紀から20世紀前半までのフランス絵画300年の歴史を、約70点の名品でたどります」とチラシにもあるように、時代の流れをたどるように並べられていた。①古典主義、ロココ ②新古典主義、ロマン主義 ③自然主義、印象主義、ポスト印象主義 ④フォーヴィズム、キュビズム、エコール・ド・パリという4章で成り立つ。美術史に疎い私でも、聞いたことのある様式や芸術運動の名前ばかりだ。しかし、代表的な作品や作風を具体的に挙げろ、と言われるなかなか難しい。本展の中につくられた300年の歴史を歩く体験によって、「なぜ、このような様式(芸術運動)が生まれたのか」という因果関係を、“体感”として知ることができた。
時代を体感するというと少し大げさかもしれないが、たとえば、肌色がとてつもなく艶やかなジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルの《聖杯の前の聖母》(1841年)を観た後に、クロード・モネの《陽だまりのライラック》(1872年)を観る。印象派の存在を知っているにも関わらず「なんだ?このもやっとした絵は…」と感じてしまったのである。印象派の作品が登場した当時は評価されなかった、ということが理解できた。
また、展示室内のディスプレイが非常に印象的だった。展示室の境に取り付けられたカラフルなカーテンや、展示室によって異なる色が貼られていた壁紙、それぞれ部屋の中央にあるソファーのカバーも壁紙と色が統一されていた。一つ一つカーテンをくぐって4つの章を観ていくと、時空を超えているような感覚になった。壁紙もいつもの展示室よりも高級感が漂い、まるで宮殿のような優雅な雰囲気を醸し出していた。その他にも、人物相関図などの表があり、展示室に入ってから出るまでの間、様々な視点でフランス絵画300年の歴史を知ることができた。
 美術史において評価されている名品を観ることは、充足感をえられるという一種の安心感を持って臨むことができる。しかし、そのことはしばしば退屈さを伴う。何かの文献など、どこかで観たような既視感があり、新作を観るときのわくわく感がない。そのようなわくわく感を作品ではなく、展示空間から感じることができたので、「何か新しいものを観ている」ということが実感できた。同じような作品でも鑑賞する環境によって違ってみえるということを、改めて気付かされた展覧会であった。 


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