2014年10月17日金曜日

黒田辰秋:イスとテーブル

黒田辰秋・田中信行-「漆という力」
2013年1月12日[土]-4月7日[日]
豊田市美術館


 デカい。ゴツい。椅子の背もたれは上辺の方が広く、背もたれ一杯に大きく深く文様が彫られている。それに比べ椅子の脚が短すぎる。アンバランスだ。高圧的で野暮ったく感じる。控えめな国民性と言われる日本人のスケールから、はみ出しているように映る。
 大柄で自己主張する欧米人なら、使ってサマになるだろうか?座った時に椅子と机の間に長い足が収まらず、窮屈じゃないかな。日本人の為に作っている、そう思わせる。
 ふと、私の祖父なら似あうかも知れないなと、思った。彼の思春期は戦時下だった。戦後の焼け野原と共に社会人デビューし、高度成長を担う歯車となることで家族を養ってきた。孫である私は、嵐のような時代を過ぎたあとに出会ったから、ステテコ姿で赤ら顔、気のいいじいちゃん。でも。時代と四つに組み合った反骨精神が、顔の皺となって刻まれていたように思う。
 私は日頃、当たり障りなく生きている、と、あぶりだされる様な気がした。そんな自分を隠したくて、野暮ったいだの高圧的だの言いがかりをつけているのかもしれない。
 じいちゃんなら、どんな感想を持つだろう?今の私に何と言ってくれるだろう?……いやそうじゃない、私がどうしたいかだ、と、作品に問われている気がした。

egg:藤井万巳

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