2014年10月22日水曜日

円山応挙――江戸期のインスタレーション

円山応挙展 ――江戸時代絵画 真の実力者――
2013年3月1日(金)~2013年4月14日(日)
愛知県美術館
http://www-art.aac.pref.aichi.jp/exhibition/history/2012_05.html
http://event.chunichi.co.jp/okyo/outline.html


 今回の展覧会の圧巻はなんといっても《松に孔雀図襖》。今回はガラスケース越しでなくじかに見られる。しかも、美術館内に仮設した和室に組み込まれての展示だ。
 建物に組み込まれた襖絵を西欧近世・近代絵画の感覚から見ると、襖の桟や引き手、柱は鑑賞するのに邪魔物としか思えない。襖絵に限らず日本の近世までの絵画は、西欧近世・近代絵画のように世界を遠近法で透視し切り取る窓あるいは鏡ではなかった。当時、襖絵の座敷を訪れた客は座ったり、近くに寄ったり、歩き回ったり、庭に下りたりして眺めたに違いない。キュビスムのように多視点で画かれる必要もない。観る者の方が動き回ったのだ。
 今回の《松に孔雀図襖》の場合、襖を一枚開け放しても、松の枝や幹が隣の襖のそれと連結するという。また、庭に出て振り返れば、襖の松の幹や枝が庭のそれとつながって見えると解説されていた。襖がそれそのものだけで完結せず、座敷、屋敷、庭、あるいは借景も含めた周囲と関係づけられているわけだ。つまり、日本美術における絵画は、サイト・スペシフィックな“インスタレーション”なのだ。


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