2014年10月22日水曜日

ハン・フェン 《浮遊する都市》

ハン・フェン 《浮遊する都市》
あいちトリエンナーレ2013
2013年8月10日(土) ~ 10月27日(日)
愛知芸術文化センター会場


私は運命について考えていた。
展示室いっぱいに広がった都市の模型。大地にがっしりと立っているはずのビル群が、フワフワと宙に浮かんで、ゆらりゆらりと揺れている。
テグスで吊ったトレーシングペーパーの建物は写真がラフに貼ってある。2000棟もの 在る都市であろう。
ハン・フェンは中国の巨大都市 上海の近郊に住み、都会を見つめている。
 
私はその揺れる都市を天空からテグスが気になって仕方が無いのである。
照明を浴び、私の目線と共にズレるその輝き

そのとき、あの一文が何故かしらよぎるのである。
芥川龍之介「蜘蛛の糸」である。
 
「ところがある時の事でございます。何気なにげなく陀多が頭を挙げて、血の池の空を眺めますと、そのひっそりとした暗の中を、遠い遠い天上から、銀色の蜘蛛くもの糸が、まるで人目にかかるのを恐れるように、一すじ細く光りながら、するすると自分の上へ垂れて参るのではございませんか。陀多はこれを見ると、思わず手を拍うって喜びました。この糸に縋すがりついて、どこまでものぼって行けば、きっと地獄からぬけ出せるのに相違ございません。」
 
私たちは「揺れる大地」に立っているのではなく、「運命の糸」の元に吊るされているのだと
ハン・フェンの作品を這いつくばって、糸の先を見上げる。
神様がいてどの糸を切ろうとしているのか。
本当に恐ろしい「糸の輝き」さっきまでピンと張り詰めていたのに、瞬間で意図も容易く消えてしまうのだ。周りは何事もなかったかのように

人間の無常の運命を見つめさせられる作品である。



egg:古橋和佳



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