2014年10月22日水曜日

打開連合設計事務所《長者町ブループリント》

打開連合設計事務所《長者町ブループリント》
あいちトリエンナーレ2013
2013年8月10日(土) ~ 10月27日(日)
長者町会場


 3年に一度の現代アートの祭典「あいちトリエンナーレ2013」の作品第1号が会期に先がけて設置され、5月の連休から公開された。
 設置された場所は伏見地下街。名古屋駅と栄駅、両繁華街の中間に位置し空洞化が進行する地区である。地下街への階段を降りたとたん昭和30年代にタイムスリップする。シャッター商店街になりかけ、かろうじて営業している洋品店や喫茶店、理容室なども、外装もそのまま昭和レトロの香りを漂わせている。失礼を承知で言えば、白昼夢かシーラカンスのような佇まいだ。
 そこに目をつけ、現代アート作品を設置した作家は台湾から来日した「打開連合設計事務所」。代表作の《Blue Print》は、都市計画により無残にも切断された築100年の建物のリノベーションである。切断面を建築設計図の青写真を模して青色に塗り、そこに白線で透視図を画いた。建物の梁や内壁、家具が、まるで内臓や骨のごとく残酷にもむき出しになっている。そして、その傷口を青く塗り、稜線を白い線で際立たせる。今や青焼き自体が懐かしいが、それが建築が持っていた記憶を呼び覚ます効果を持つ。
 さて、伏見地下街に設置された作品、《長者町ブループリント》は、地下街への5つの階段口を青く塗り稜線を白線で際立たせ、地下街の途中5ヵ所には、青地に白の輪郭で階段や「忠犬ハチ公」が画かれている。それも、ある一定の視角から眺めると透視図法的に立体感をもって立ち現れるように計算されてもいる。地下街を通過中、ビューポイントにさしかかると、それまで平面的に歪んだ図形が突如として階段や犬として立体的に飛び出してくるというトリック仕掛けだ。ジョルジュ・ルースにも似るが、ルースの場合、ビューポイントから見たとき、建物の立体感は消え去り平面的な図形だけが浮かび上がる。これに対し《長者町ブループリント》の場合、建物の立体感は残ったまま、別の透視図が現れる。現在と未来がダブルイメージとなって立ち上がる。
 青焼きはいわば未来への設計図であり、それが古びた商店街と奇妙な調和を見せる。つまり、昭和30年代へと時間を遡るタイムトンネルが、実は未来への設計図と繋がっているのだ。
 ところで、今回2回目の「あいちトリエンナーレ2013」のテーマは『Awakening揺れる大地。われわれはどこに立っているのか。記憶、場所、そして復活』である。それは、直接的には東日本大震災後のアートをテーマにしている。しかし、その土地・場所に塗り込められた記憶を呼び覚まし(=Awakening)、際立たせ、再び記憶として刻み込むという意味にも解釈可能だ。《長者町ブループリント》は、文字どおりこのテーマの設計図のような作品だといえる。いずれにしても、設置第1号にふさわしい作品であることだけは間違いない。
egg:武藤祐二





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