2014年10月17日金曜日

田中信行:質感と形と無邪気さ

黒田辰秋・田中信行-「漆という力」
2013年1月12日[土]-4月7日[日]
豊田市美術館


 具象的でない作品。私の苦手な分野。作品への取っ掛かりが掴めない。ふと何か感じた次の瞬間に、こそばゆくなったり不安になったりして、打ち消したくなる。
 迷いのない作品群は、私の感性を見透かしている……気がする。
 どの作品も表面がつるりとしている。どの個所を見ても曲線で成り立っている。その質感が気になる。もし触れたなら、その手を拒絶するだろうか?金属製の人工物の様に、こちらの気持ちをヒヤリとさせる様な気もする。あるいは、手の平に吸いつくようにそっと寄り添い、じんわり温めてくれる気もする。相反する印象が同居し、戸惑う。作品との関わり方が揺らぐ。
 美術館の展示室で作品に集中していると、ひらひらと動く華奢な手が見えた。そちらに目を向けると、若い女性が友達と話している。――ここの黒色は、塗ってるのかなぁ?照明の影かなあ?――彼女たちは作品にあたる光に手をかざし、その影が作品に映るかどうかを試していた。
 無邪気で微笑ましくて、私は自然と肩の力を抜くことができた。
 きっとこの無邪気さも、この作品群の中に含まれているんだろうな。
 抽象的な作品の持つ無邪気さが、私には少し眩しいのかも知れない。 

egg:藤井万巳

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