2014年10月23日木曜日

あいちトリエンナーレの作品解説に挑戦!:ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー《40声のモテット》

ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー《40声のモテット》
あいちトリエンナーレ2013
2013年8月10日(土) ~ 10月27日(日)
愛知芸術文化センター会場


 円環状に並んだ40台のスピーカーから、トマス・タリスの合唱曲《我、汝の他に望みなし》が流れている。トマス・タリスは16世紀のルネッサンス音楽の作曲家である。メロディ、リズム、ハーモニーという音楽の三大要素のうち、ハーモニーを重視した西洋クラシック音楽の歴史の中でも、特にルネッサンス音楽は音どうしの純粋な響き合いを大切にした時代の音楽である。
 合唱曲は一般的には4声(声部)であり、モーツァルトが二度聴いて楽譜に書き起こしたという伝説がある、バチカン教会の秘曲、グレゴリオ・アレグリ作曲の《ミゼレーレ》でさえ9声部である。40声の音楽を実際に40人が歌うことは極めて困難で、各声部を個別に録音したものをスピーカーから流しているという。
 40声部もあると聴き分けることさえ難しい。個々の旋律やハーモニーが聴こえてくるというよりも、その歌声による空気の振動がまるで羽毛のような柔らかい塊、現代音楽技法のトーン・クラスターのようになって聴く者を包み込み、それが皮膚を通して身体に浸透してくるかのようだ。
 10階に展示されているコーネリア・パーカーの《無限カノン》は金管楽器を円環状に吊り下げている。パーカーの作品は、影は見えるが音は聞こえない。一方、カーディフの作品は、声はすれども姿が見えない。だが、双方とも静かな祈りのような情感によって共鳴しあっている。



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