2014年10月23日木曜日

あいちトリエンナーレの作品解説に挑戦!:アンジェリカ・メシティ《Citizens Band》

アンジェリカ・メシティ《Citizens Band》
あいちトリエンナーレ2013
2013年8月10日(土) ~ 10月27日(日)
納屋橋会場


 四角い部屋の中の真ん中にいすがおかれ、そこに座ると四面のスクリーンにそれぞれ映像が映っている。まず都市の電車の中、キーボードを肩に一人の青年が奏で、自ら歌う。その声はたくましく、身体の中から湧き上がる素直な声である。またその歌の持つ情感からは哀切さえ伝わってくる。周りの乗客は明らかに耳にしているのだが、誰も気付かないように、彼の前を過ぎて行く。
 次の面は、都会の片隅、聴衆がいるのかどうかわからない場所で、一人パフォーマンスする青年。馬頭琴を奏でながらその音にうながされるように繰り出すホ―ミー。その独特の音質、まるでモンゴル草原の大地のうねりだ。広大な故郷を思い歌う声は哀調を帯びている
 次のスクリーンはタクシーの中のドライバーを映し出す。彼の口笛はどの楽器にも劣らない、研ぎ澄まされた人間の技だ。彼の奏でる音もまた故郷を追慕するようだ。
 最後は紅一点、若い女性パーカッショニストのプールの中でのパフォーマンスだ。美しい肉体を持つ水着姿の女性が自らの手で水面を叩き、作り出す力強い音。水しぶきと巧みに繰り出される複雑な水音の競演だ。最後は4人の演奏を合わせた、迫力の音で終わる。
 故郷を遠く離れた者たちの都会での孤独、自らのアイデンティティへの確かな思いが微妙に混ざり合い、ひとつのシンフォニーになる。鮮烈な映像と人の作り出す音によって現代社会を切り取っているのだろう。


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