2014年10月22日水曜日

青野文昭《なおすシリーズ》

青野文昭《なおすシリーズ》
あいちトリエンナーレ2013
2013年8月10日(土) ~ 10月27日(日)
愛知芸術文化センター会場


 青野文昭は1968年仙台市生まれ、宮城教育大学大学院卒業、現在も仙台市を拠点として活動する作家である。
 1990年代から漂流物や廃棄物を拾い集め、それらに様々なものを補完し、「修復」したモノを作品化している。自身も東日本大震災で被災し、そのことが製作姿勢において大きな変化をもたらしたという。震災後は積極的に震災瓦礫を用いて製作を続けている。
 青野の修復という概念は芸術への真摯な問いかけからであった。ゼロから全てを作ってしまう作品では自然や実在する空間、時間との関係性が希薄になってしまい、作品を現実離れした別世界の物にしてしまう。そういった関係の希薄さを嫌い、「現物と融合させる」ことで作品をより強いものにしようとしたのである。
 激しく前面が潰れた軽トラックと箪笥が合体した《なおす・代用・合体・侵入・連置(震災後東松島で収集した車の復元)》、廃船とに食卓テーブルが継足された《なおす・代用・合体・侵入・連置(震災後石巻で収集した廃船の復元)》。壁面には、カセットテープや時計、ノートなどの修復物がそれらを取り囲んでいる。
彼の手により修復された作品は到底実用に供するモノではなく、時として得体の知れぬ、ある種グロテスクとさえ感じるモノへと変容される。
そのことについて青野は、「震災ゴミに刻印された震災の記憶、自然力の波動、ノイズ、泥、歪みが、代用物の家具を通して、ある意味「余剰分」として際立ち浮き上がりながら、「補完」され「延長」されえる。場合によっては、刻印された傷跡・その「変化」がより増長され、視覚的に強化され、造形的に半永久化されうる。」と述べている。
 愛知県美術館10階展示室廊下の突当り、中庭を望む出窓に私の好きな青野作品がある。宮古の衣料品店の床面と、テーブルを合わせた作品である。晴れた日は木漏れ日がテーブルに淡い影を落とし、中庭の緑と相俟って静穏な空間を生み出している。
 「造形的に半永久化されうる。」テーブルは、震災の記憶を内包しながらも、新たな意味をも持ち始めているのかもしれない。 



egg:長良かおり


青野文昭ホームページ:http://www1.odn.ne.jp/aono-fumiaki/
 アスアーク美術館:http://www.riasark.com/yomubi/body/9-aono_fumiaki.html

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