2014年10月22日水曜日

『したいからする・したいようにする』それはアートの原点だと信じる。 

体感アート@県美.COM(ケンビドットコム)―ヌイプロジェクト.アボリジニ.現代美術&子どもたちの美術―
2013年1月22日(火)~5月6日(月)
岐阜県美術館


「これでもか」。
人はよく、作家が全力をこめた特に細かい手法で表現したアートに、そんな言葉を贈る。
岐阜県美術館に集められた、造形の原点とも言える「点(ドット)」たちを観た誰もが、心の片隅に感じたことだろう。
チケットでも紹介されていた『野間口桂介〈綿シャツにミクストメディアの刺繍〉2005年・しょうぶ学園蔵』は『ヌイ・プロジェクト』と名付けられた作品群の1つだ。
木綿で予め作られた襟付きの白いシャツが、作家・野間口による刺し子を基本とした手法で、新しい形になっている。テーマである「点・ドット」は、針と色糸が布に描いた軌跡であり、色糸の間から見える布地の風合いだったりする。
最初は普通の大人サイズだっただろうそれは、未収園児の上着くらいにまで縫い縮められているだけれど、不思議と窮屈な雰囲気ではない。むしろ、作家がしたいからした、やりたいようにしたという満足感があふれ、観ている側にも伝わってくる。そしてシャツは着られることを拒んではいない。そして「どう?ステキになったでしょ」と、自慢げに挑発してくる色気さえある。それでいてきっと着ることができる人物は、かなり限られるだろうなぁと、縮まった今もシャツであることを続けるそれを見てウフフと笑ってしまう。
 この作品展は野間口らしょうぶ学園の利用者の作品と地元小学生の水を表現した作品、現代美術作家の中でドットをテーマにしている作家作品、オーストラリアのアボリジニアートの3部からなっており、そのどれもが作品の全体または一部に『点』を用い表現している。
どんな手法でも、どんな画材でも、どんな大きさでも表現できる『点』は作家にとって万能の素材だと感じる。それはアートの文字通り原点で、人が人として表現の原点だとも感じる。自由で勝手で哲学的な屁理屈もまとい。笑いながら怒りながら泣きながら作品たちは生まれてきたのだろう。その点がどこまで広がりどこに行くのか、そして作家は、この先でどんな変化を遂げる仕掛けを点に与えたのだろうか。
 変化を遂げる。その予感はアボリジニの作品を見ていると感じる。野間口の作品も現代美術の作家たちの作品も、時間の経過の中で色あせることなくより輝くように変化していくのだろうと。
 『したいからする、したいようにする』作家の自由さ。点は、その心意気を決して妨げず堪能させてくれる最高の表現サポーターだと信じられた展覧会だった。       

egg:井川尚子


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